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住まいの言い分 Vol.3

No.26 / 49

音は、すきまから逃げる。

楽器を弾く、レコードをかける、配信をする。好きなことを好きな時間にやるために、壁を厚くすれば安心だと思いがちだ。けれど、音は、壁より先に、もっと細い道から出ていく。

ランプの灯る椅子とスピーカーのある暗めの部屋。
あたたかい暗がりに、スピーカーと椅子とランプ。 写真:hypernature/Unsplash/Unsplash License
自宅のドラム練習用の部屋。壁に吸音パネルが並び、ドラムセットとマイク、パソコンが置かれている
壁に吸音パネルを並べた、小さなドラム練習室。 写真:Shixart1985/「Drums in a home music studio.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY 2.0

音には、2つの道がある

日本建設業連合会の用語集は、音源から空気の振動として伝わる音を「空気伝搬音」と呼び、界壁や窓などを直接通り抜けて伝わる音もこれにあたるとしている。声やスピーカーの音は、こちらである。

もうひとつは「固体伝搬音」。建物に力や衝撃が加わると、振動が建物の中を伝わり、離れた場所で空気中に音として出てくる。歩く音、ドアの開閉、物を落とす音、機械の動く音などが振動源になる。固体伝搬音は、伝わる道筋が複雑で減衰しにくいため、一般に空気伝搬音より対策がむずかしい。

音の出ていく2つの道のイラスト
空気を伝わる音は窓やすきまから外へ、床や壁を伝わる音は建物の中を通って下の階や隣へ。 イラスト:住宅プランナー。
斜めの天井に天窓のある部屋に、電子ドラムとアンプ、ラジエーターが置かれている
天窓のある屋根裏の部屋に、電子ドラムとアンプ。 写真:Marcus Ilgner/「Ma il's home recording studio - Part 1 - V-Drum, Chapman Stick, Warwick bass amp.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY 2.0
暗がりに浮かぶ小さなランプと、ギターのネック。
ランプと、壁に立てかけたギターのネック。 写真:rmzeck/Unsplash/Unsplash License

壁を厚くすれば、いいのか

同じ資料によれば、壁の面の重さを2倍にすると、音の通り抜けにくさは約5デシベル大きくなる。厚くて重い壁は、効く。

ただし、壁がどれだけ良くても、まわりを回り込む音がある。経路には、窓やドアなどの開口部、外壁、壁の周囲のすきま、柱や梁、床や天井が挙げられている。ドアの下の細いすきま一本で、壁の性能は台なしになる。

青い壁にベースギターとアコースティックギターが掛かり、手前にキーボードとミキサー、マイクスタンドがある
壁にギターを掛けた録音の部屋。マイクは天井から吊られている。 写真:Marcus Ilgner/「Ma il's home recording studio - Part 2 - Kurzweil K2500X, Multitrac recorder, microphone with popguard, Ibanez RD 5 string bass, Yamaha Pacifica, etc.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY 2.0

いちばんの穴は、窓

住宅性能表示制度の音環境の項目のうち、一戸建てで評価の対象になるのは、外壁の窓などの開口部の遮音だけである。ほかの3項目は共同住宅等が対象になっている。

窓の遮音は等級で表され、等級3は、100〜2500ヘルツの音の平均で25デシベルほど低減するサッシにあたる。沖縄県の住宅性能表示の解説は、静かな住宅地ではそこまでのサッシは一般には使わないこと、窓だけを良くすると、いままで気にならなかった室内の音がかえって気になることがあることも、書いている。

既存の窓の内側に窓を足す内窓は、YKK APによれば、ガラスの仕様によって違うが、約15デシベルの防音効果がある(メーカー公表値)。耳には、10デシベル下がると音が約半分になったように感じられるという。同じ資料は、二重窓にすると音が部屋にこもることがあることにも触れている。

自宅の録音スペース。机にキーボードとパソコン、マイク、小さなスピーカーとヘッドホンが置かれている
普通の部屋の一角を使った録音スペース。 写真:LiquidMolly/「LiquidMolly's home recording studio - overview.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 2.0
ソファの上にノートパソコンとマイク、ヘッドホンが置かれている
ソファの上に机がわりの台。マイクとヘッドホンだけで、配信の部屋になる。 写真:Subhashish Panigrahi/「Home-studio recording setup for Kathabhidhana.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0

数字を、どう読むか

環境省の騒音の環境基準では、住居の用に供される地域(A・Bの区分)の昼間は55デシベル以下、夜間は45デシベル以下とされている。昼間は6時から22時、夜間は22時から翌朝6時。ただしこれは屋外の環境の目標で、自宅の楽器の音を縛る数字ではない。

環境省の「生活騒音」のリーフレットは、生活騒音には法的な規制はないが、近所や地域で話し合う、市区町村に相談するなどの解決の方法があるとしている。気くばりとして、時間帯への配慮、音がもれない工夫、音を小さくする工夫、音の小さい機器を選ぶ、近所づきあいの5つを挙げ、オーディオは夜間にヘッドホンを、楽器は本格的な防音対策やカーペットなどで室内の吸音を、と勧めている。

本棚の前で、男性がターンテーブルにレコードをのせている。棚の上にはヘッドホンがある
本棚のとなりにターンテーブル。夜はヘッドホンに切り替えるのも、ひとつの手だ。 写真:Shixart1985/「Elderly man in plaid shirt listens to vinyl records in cozy living room surrounded by books and warm light.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY 2.0
寄木の床に日が差す明るいリビングと、背の高いスピーカー。
日が差す居間に、背の高いスピーカー。 写真:Markus Spiske/Unsplash/Unsplash License

家を建てるなら

音の出る趣味があるなら、設計の最初に、何の楽器を、いつの時間帯に、どのくらいの音で使うかを、住宅会社に具体的に伝えたい。それによって、部屋の位置、壁と窓の仕様、床の作りが変わる。

音の出る部屋は、寝室や隣の家に近い面から離して置き、そのあいだに収納や廊下をはさむと、音は伝わりにくくなる。窓は小さく、数を絞る。ドアは、すきまの少ない作りにする。こうしたことは、間取りを描く段階でしか決められない。

住宅プランナーの判定は、遮音の性能までは見ていない。部屋の位置や広さを叩き台で決めたうえで、遮音の仕様は住宅会社と設計者に確かめてほしい。

音の出る部屋の位置を、考えてみる

住所と家族の人数を入れると、間取りの叩き台と、建つ見込み、金額の幅が出ます。

間取りの叩き台をつくる

無料。叩き台であり、最終的な可否と金額は住宅会社が決めます。

参考:日本建設業連合会 音環境専門部会の用語集(空気伝搬音・固体伝搬音・質量則・側路伝搬)、国土技術政策総合研究所 研究報告 No.69、沖縄県「住宅性能表示制度Q&A」、YKK AP「内窓による防音」(メーカー公表値)、環境省「騒音に係る環境基準について」・「生活騒音」リーフレット。

2026年10月10日確認

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