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住まいの言い分 Vol.5

No.28 / 49

階段は、家でいちばん場所を食う。

毎日、何度も上り下りするのに、階段は、間取りを描く最後の最後に、残った場所へ押し込まれがちだ。階段は、小さな部屋ひとつぶんの場所を、黙って食っていく。

木の箱階段(たんす階段風)が収まった、板張りの明るい廊下。
板張りの廊下に収まった、木の箱階段。 写真:Sayless studios/Unsplash/Unsplash License
奈良県の高木家住宅の座敷にある箱階段。引き戸のついた階段の下が収納になっている
奈良県橿原市の高木家住宅。座敷の脇に、引き戸のついた箱階段がある。 写真:ignis/「Takagike Kashihara JPN 002.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 3.0

階段の急さには、法律の上限がある

建築基準法施行令の第23条は、階段の幅、蹴上げ、踏面の寸法を表で定めている。住宅など一般の階段は、幅75センチ以上、蹴上げ22センチ以下、踏面21センチ以上。ただし、住宅の階段(共同住宅の共用階段を除く)は、蹴上げを23センチ以下、踏面を15センチ以上とすることができる。

蹴上げが段の高さ、踏面が足をのせる奥行きだ。この2つの寸法の組み合わせで、階段の傾きが決まる。

階段の断面の比べ。表の原則と、住宅のただし書きの寸法を、実寸の比率で並べた
2つの寸法の階段を、同じ縮尺で並べた。 イラスト:住宅プランナー。傾きは寸法から計算した値で、法律の数字ではない。

許されるぎりぎりは、約57度

寸法から傾きを計算すると、表の原則(22と21)で約46度、住宅のただし書きの上限(23と15)で約57度になる。法律が許す範囲と、楽に上り下りできる傾きは、別の話だ。

手すりについても決まりがある。同じ施行令の第25条は、階段には手すりを設けなければならないと定める。ただし、高さ1メートル以下の階段の部分には適用しない。

三重県の関宿の古い家にある急な箱階段。引き出しと格子戸の段が壁に沿って上へ続いている
三重県・関宿の古い家の階段。傾きが急で、段が引き出しになっている。 写真:Odyssey/「Old wooden house's steep staircase in Seki-Juku JPN.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 2.0

どれだけ場所を食うか

階段をつくるには、最低でも1坪(3.31平方メートル)の場所が要る、と書く工務店のコラムがある。別の住宅会社のコラムは、いちばん省スペースの階段でも、2畳ほどの場所が要るとする。どちらも、おおよそ畳2枚ぶんだ。

2階建てでは、階段は1階にも2階にも、同じ場所を必要とする。小さな家ほど、この割合は重い。

木をなめらかに曲げた彫刻的な階段。
木の曲線でできた、彫刻のような階段。 写真:declansun/Unsplash/Unsplash License

箱階段という発明

日本には、階段そのものを収納にしてしまう知恵がある。日本建築・美術用語辞典(JAANUS)は、箱階段を、階段と収納箱を兼ねたもので、江戸時代の早い時期から中ごろにかけて町家に多く、民家や寺にも見られるものと説明している。階段を箱の連なりとして組み、段の下の空いた場所を、戸棚や引き出しに使った。動かせる家具であることも多い。

川越の大沢家住宅にある箪笥型の階段。引き出しの段と木の手すり
埼玉県川越市の大沢家住宅。段のひとつひとつが引き出しになっている。 写真:江戸村のとくぞう/「Osawajyutaku-6.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0
福岡市の旧三浦家住宅の箱階段。引き出しがびっしり並び、黒い手すりと親柱がある
福岡市の旧三浦家住宅。引き出しがびっしりと並ぶ。 写真:Hirho/「Former Miura Residence the hakokaidan in the middle room Reisenmachi Hakata-ku Fukuoka 20240119 163953.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0

急な階段と、暮らす人

京都の町家に暮らす人のエッセイは、引き出しや引き戸つきの棚を兼ねた階段を、現代の住宅には向かない傾きだが、慣れると案外のぼりやすい、と書く。

いまの家に、そのまま持ち込めるものではない。けれど、階段の下や横を、収納に使うという考え方は、そのまま使える。

松阪商人の館の座敷。広い畳の間の脇に、箪笥型の階段がある
三重県・松阪商人の館。広い座敷の脇に、階段箪笥が据えてある。 写真:もんじゃ/「The House of Matsusaka Merchant 2.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0
広島県宮島口の食事処にある階段箪笥。階段の脇に帽子とステッキが掛かっている
広島県・宮島口の食事処の階段箪笥。 写真:Lisa Pinehill/「Wooden Staircase of Anagomeshi Restaurant Ueno, Miyajima-guchi - Mar 24, 2014.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 2.0
階段と戸棚、引き出しが一体になった木製の収納を描いた古い挿絵
階段と戸棚・引き出しを一体にした収納を描いた、1880年代の挿絵(米国のモースが日本の住まいを記した本より)。 写真:Edward S. Morse/「JapanHomes 177 Kitchen closet, drawers, cupboard, and stairs combined.jpg」(Wikimedia Commons)/パブリックドメイン

リビング階段の、うれしさと代償

いまの家づくりでは、リビングの中に階段を置く「リビング階段」が人気だ。一級建築士の解説は、デメリットとして、音が聞こえやすいこと、料理のにおいが伝わりやすいことを挙げ、階段の前に引き戸をつけるのが有効だとしている。

熱の問題もある。階段でリビングと2階の空間がひとつながりになるので、吹抜けの間取りと同じように、暖房の効率は大きく落ちる。それでも、断熱等性能等級4にして、樹脂サッシなどの高断熱の窓を使えば、ほとんどの人にとって、それほど寒くはない、という。

窓の光が当たる赤褐色の木の階段と、親柱の手すり。
窓の光が当たる、赤褐色の階段。 写真:Leyla M/Unsplash/Unsplash License

家を建てるなら

階段の位置は、間取りの最後ではなく、最初に決めたい。階段をどこに置くかで、廊下の長さも、部屋の形も変わるからだ。家の中心に置くのか、端に寄せるのか。リビングの中か、外か。

住宅プランナーの間取りでは、階段を北側の水まわりと並べる型と、リビングの中に置く型を選べる。同じ広さでも、階段の置き場所が違うと、間取りの印象はまったく別のものになる。

階段の置き場所から、間取りを見てみる

住所と家族の人数を入れると、階段の位置の違う型で、間取りの叩き台と、建つ見込み、金額の幅が出ます。

「デザイナーズ」で設計する

無料。叩き台であり、最終的な可否と金額は住宅会社が決めます。

参考:建築基準法施行令 第23条・第25条(e-Gov法令検索)、JAANUS 日本建築・美術用語辞典「箱階段」、リコーイメージング「町家で暮らす日々」、悠悠ホーム・ネクストハウスの工務店コラム、ダイヤモンド不動産研究所の解説記事。

2026年10月10日確認

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