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住まいの言い分 Vol.6

No.29 / 49

縁側は、家の外でも中でもない。

座敷のすぐ外に、細長い板の間が張り出している。靴は脱いである。けれど、屋根の下だから、雨には濡れない。縁側は、外と中の、どちらにも入りきらないところに居る。

福岡市の旧三浦家住宅の濡れ縁。庭に向かって板が張り出し、沓脱石と坪庭が見える
福岡市の旧三浦家住宅。濡れ縁の先に沓脱石があり、その向こうが坪庭になっている。 写真:Hirho/「Former Miura Residence the nure-en and kutsunugi-ishi seen from the tsuboniwa Fukuoka 20241114.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0

縁側が広まったのは、そんなに昔じゃない

縁側は、昔から日本の家にあったもの、と思われがちだ。『世界大百科事典』の「縁側」の項(鈴木充)は、庶民の住まいに縁側が広まったのは、17世紀から19世紀にかけてのことだと説明している。

川崎市の日本民家園に移築されている旧伊藤家住宅は、縁側がごく浅く、縁側が生まれたころの姿を残すとされる。同じ園の旧北村家住宅では、縁側が、ヒロマ(広間)の前に付いている。江戸中期以降の民家に、ふつうに見られる形だ。

旧坂東家の縁側。板張りの縁が障子の前に長く伸び、庭に面している
旧坂東家の縁側。障子の前に、板の縁が長く通っている。 写真:Ocdp/「Engawa.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 3.0

縁にも、名前がある

縁側と一口に言っても、種類がある。『日本大百科全書(ニッポニカ)』は、濡れ縁、榑縁(くれえん)、簀子縁(すのこえん)、切目縁(きりめえん)といった呼び名を挙げている。

いちばん知られているのは濡れ縁だろう。雨戸の外にある、雨に濡れる縁だ。雨水を流すために、わずかな水だれ勾配(100分の1)をつけて張る。

古い民家の縁側。黒光りする板張りの縁が、障子の座敷に沿って続く
古民家の縁側。長年の手ずれで、板が黒く光っている。 写真:663highland/「Old Toshima House06s5s3200.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY 2.5

縁側の幅は、使い方で決まる

縁側の奥行きは、通り道として使うなら狭くても足りる。けれど、そこに腰かけたり、荷物を置いたり、テラスのように使いたいなら、1.2〜1.5メートルは欲しい、という解説がある。

庭に面した縁側。ガラス戸と障子の前に板張りの縁が通っている
庭に面した縁側。 写真:Savannah Rivka/「Garden and engawa in Japan (158).jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0

軒が、日ざしの季節を分ける

縁側のいちばんの働きは、軒との組み合わせにある。東京の真南で、太陽の高さは、夏至に約77.5度、春分・秋分に約54度、冬至に約30.6度(建築研究資料No.119、自立循環型住宅の設計ガイドラインによる)。

夏は太陽が高いから、軒が日ざしをさえぎる。冬は太陽が低いから、軒の下をくぐって、部屋の奥まで光が入る。縁側は、何も足さなくても、夏の日除けと冬の日だまりを、同じひとつの形でやっている。

縁側と軒の断面図。夏至の日ざしは軒の先でさえぎられて縁側に落ち、冬至の日ざしは窓から部屋の奥まで届く
夏至と冬至の日ざしを、同じ断面に描いた。 イラスト:住宅プランナー。太陽高度は東京・真南の値。軒の出90cm、軒の下端240cm、窓の下端90cmは作図のための仮の寸法で、実際の家の設計値ではない。

軒の出は、どれくらいがいいのか

同じ設計ガイドラインには、南面の軒の出の目安がある。窓の下端から軒の下端までの高さの差の、3分の1以上、というものだ。図の寸法では、高さの差が150センチだから、50センチ以上。図の90センチは、その目安を十分に満たしている。

図の仮の寸法で計算すると、夏至に軒の先をかすめた日ざしは、壁から約37センチの縁側に落ちる。冬至の日ざしは、窓の高さ187センチあたりで壁に当たり、床では壁から約3メートル奥まで届く。

縁側の外にすだれが掛かっている。奥にガラス戸がある
縁側の外に、すだれが掛かっている。 写真:Savannah Rivka/「Engawa, sudare, and garasudo - Japan (138).jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0

夏のすだれ、冬の陽だまり

軒だけでは足りない日は、すだれを掛ける。日ざしを外でさえぎるから、障子やカーテンを閉めるより、部屋に入る熱が少ない。冬になれば、すだれを外して、日ざしを通せばいい。

昔の家は、季節ごとに、建具や小物を入れ替えながら、日ざしの量を調整してきた。縁側は、そのための、ちょうどいい場所だった。

明治村の移築建物の縁側。板の縁が障子の座敷の前に長く続く
愛知県・明治村の移築建物の縁側。 写真:Emzett85/「Japanese House - Engawa.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 3.0
太田家住宅の縁側。縦長の画面で、縁板と柱、障子が奥へ続く
太田家住宅の縁側。 写真:663highland/「Ota house Tomo06n4592.jpg」(Wikimedia Commons)/CC BY 2.5

家を建てるなら

縁側は、なくしても部屋としての広さは変わらない。けれど、軒の出と窓の高さを決めるとき、夏と冬の日ざしを思い出すと、縁側がしていた働きを、別の形で取り戻せる。

日ざしの量は、建つ土地の向きや、隣の家の高さで変わる。軒の出や窓の高さは、図面の上で決める前に、住宅会社と、夏と冬の日ざしの入り方まで話しておくといい。

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参考:世界大百科事典「縁側」(鈴木充)、日本大百科全書(ニッポニカ)「縁」、建築研究資料No.119、自立循環型住宅の設計ガイドライン、川崎市立日本民家園の旧伊藤家住宅・旧北村家住宅の解説、講談社『家とインテリアの用語がわかる辞典』。

2026年10月10日確認

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