現代の住宅 西沢立衛「森山邸」2005年
No.8 / 49
庭をはさんで住む
東京都大田区の住宅地に、大きさも高さもまちまちな白い箱が、庭をはさんで散らばるように建っている。建築家・西沢立衛が設計し、2005年10月に完成した森山邸である。1軒の家を一つの建物に収めるという、住宅のもっとも基本的な前提を外したこの作品を、設計者自身の言葉をたよりに読んでいく。
110の棟
森山邸は10の棟からなる1。1棟だけで住宅の機能をすべて満たすものもあれば、居間だけ、浴室だけという棟もある。それぞれの棟は小さな庭や屋外の通路を囲むように並び、住まい手は棟から棟へ、いったん外に出て移動する。
施主から求められたのは、賃貸の集合住宅と、施主自身の住まいを一つの敷地のなかにつくることだった2。西沢は住戸を一つの建物にまとめず、棟を分けて敷地に散らした。そうすれば、賃貸の住戸一つひとつに専用の庭を与えることができ、それが住まいの魅力になると考えたのである2。
2薄い壁と大きな孔
各棟の壁は薄い鉄板でつくられ、そこに大きな開口が開けられている1。西沢は、壁を面としてつくると非常に閉鎖的になるので、限界までなるべく大きな孔を開けて、開放的な室内をつくろうとしたと述べている2。棟ごとに床の高さも異なるため、室内から見える風景は、どの棟に立つかによって変わる1。
小さな棟を離して置くことは、周囲の街並みとの関係にもかかわっている。一つの大きな建物を建てれば、周りの木造住宅のなかで量感が際立つ。棟を分ければ、その一つひとつは周りの家と同じくらいの大きさにとどまる。西沢は、集合住宅から住宅へと移り変わっていく風景を考えたと書いている2。
3住み方が変わっていく家
施主は、借入の返済が進むにつれて賃貸の住戸を少しずつ減らし、いずれはすべての棟を家族の住まいとして使うことを考えていたという2。棟が分かれているからこそ、どの棟を人に貸し、どの棟を自分で使うかを、暮らしの変化に合わせて組み替えることができる。
2021年4月からは、棟の一つが「もりやまていあいとう」として時間単位で貸し出されている3。写真では伝わりにくい棟と庭の距離感を、実際に確かめることができる。
4図面と写真を見る
森山邸の図面と写真は、設計者と撮影者の著作物であるため、本稿には転載していない。設計者自身による解説と、写真を多く収めた紹介記事を、下記の掲載元で見ることができる12。
5今の家づくりに持ち帰る
住宅プランナーの自動設計は、いまのところ一つの建物としての住宅だけを描く。森山邸のように棟を分けた計画は扱えない。ただ、そこから持ち帰れる考え方はある。庭を建物の外周に余った土地として残すのではなく、部屋と部屋のあいだに置くものとして考えることである。たとえば平屋であれば、居間と個室の棟を分け、そのあいだを庭にするという計画が考えられる。
もう一つは、将来の住み方の変化を最初から計画に入れておくことである。子どもが独立したあとに一部を貸す、親世帯を迎えるといった変化は、多くの家に起こりうる。水まわりや出入口をどこに置くかによって、その変化への対応のしやすさは大きく変わる。
敷地の条件から、叩き台を描く
住所と家族の人数を入れると、間取りの叩き台を描き、建つ見込みと金額の幅を示します。平屋の型も選べます。
「平屋でゆったり」で設計する無料。叩き台であり、最終的な可否と金額は住宅会社が決めます。
注
- 「西沢立衛による、東京・大田区の『森山邸』の一部を、時間貸しするサービスが開始」architecturephoto.net。竣工年月、所在、棟の数と構成、薄い鉄板の壁と開口、床の高さ。写真あり。https://architecturephoto.net/110450/
- 西澤立衛「自作について『森山邸』」東西アスファルト事業協同組合「私の建築手法」。設計の条件、庭、開口、街並み、施主の住み方の計画。https://www.tozai-as.or.jp/mytech/05/05_ryuei03.html
- 「西沢立衛設計の〈森山邸〉が1棟を『もりやまていあいとう』として時間貸し」TECTURE MAG。https://mag.tecture.jp/business/20210212-22138/
2026年9月27日確認
国・自治体とは関係のない、民間のサービスです。